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<海と生きる海と遊ぶ NO1> キューリ 06/3/8(水) 14:29 [画像あり]

<海と生きる海と遊ぶ NO1>
 キューリ  - 06/3/8(水) 14:29 -

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[画像あり]〜添付ファイル〜
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   冬眠してたわけじゃないですが、ここに書くのさぼってました。
ごめんなさい!
今年初の書き込みは、ちょっと真面目に書いた文章を載せちゃいます。昨年から書かせて頂いている「国土交通」(国土交通省発行)という雑誌のエッセイ<海と生きる海と遊ぶ>です。
海の世界の面白さをお伝え出来ればうれしいなあ!

************************
<海と生きる海と遊ぶ NO1>

ものごころついた時から、海と遊んでいた。
砂遊び。
貝殻拾い。
波と戯れ、沖へと泳いでいく父の背中を追い、足のつかない恐怖を感じ、それでもバタバタと泳いだ。
魚釣りや貝ほり。
岩場の生き物観察も最高に楽しい時間だった。

 海に吹く風はいつも心地良かった。
 海から聞こえる波の音に心弾んだ。

今でも、かわらない感覚だなあ、と苦笑交じりに想う。
海に感じる気持ちはあの頃からまったくかわらない。成長していないのかもしれないとふと思う。しかし、これが「原体験」というものだろう。
 ヨットに乗り、太平洋を縦横無尽に航海しても、世界一周しても、台風の真ん中で転覆しても、人のやらないような冒険航海に突き進んでいても、私の心の中にはいつもいつもあの頃感じた海へのときめきが存在している。

 故郷の海辺でぱちゃぱちゃと遊んでいた頃からすると、私の海の世界は信じられないほど大きく広がった。それこそ今の遊び場は、「七つの海」。
美しすぎるほどの海、自然の神様が作り上げた芸術作品のような海、人々が快楽のために作り上げた海、人々を海から遠ざけるために作られた壁に囲まれた海、「ごめんなさい」と謝りたくなるほどの荒れた海、どれも真実の海の世界であり、私はその大きな世界で遊ばせてもらっている。

 遊び場では物足りず、ここ数年は海の上のヨットで暮らしてもいる。今日、今、この一瞬の波も風も感じていたい。
海の成り立ちに比べれば、私たち人間の一生なんて、短すぎる。その短すぎる中で、どれだけのときめきを感じられるだろうか・・・そう思った時、私には海と風と共に生きる生活が必要だと切実に感じた。
 ゆるやかな風が起こす、この打ち震えるようなさざ波ももう二度と感じる事の出来ない経験なのである。勢力をまして襲ってくる台風の巻き起こす風もうねりも、この身で感じたい。
どんな海の姿も受け止めたい。どれも私の愛する海の一面なのである。海への想いを人一倍持っているという自負心があるならば、海の真の姿を見つめなければ。感じなければ。それほどの愛情とときめきと覚悟を持って海と風と共に生きたい。
そう、それが、私の生き方。

日本で私のように生きている人は少ないだろう。これほどに海にのめり込む人が増えてほしいとは思わないが、多くの人にちょっとでも 海や海辺の魅力を感じてもらうためにはどうすればいいか。それはいつも考えている。
確かに海には厳しい一面もある。では海から離れて人は生きていけるのか、というと非常に難しい。特に、海に囲まれた日本では無理な事だ。
でも、子供時代に私のような海での原体験を持つ人も少なくなった。
 テレビや映画や雑誌で海外の海や海辺の風景を見る。「海で遊ぼう」と多くの人が海外にでかける。日本の海はそんなに魅力がないだろうか。遊べない状況になってしまっているのだろうか。
私は思う。魅力がないわけではない。遊べない状況でもない。遊ぶ気がないだけ。魅力を感じる機会が少ないだけ。私たち海に関わる人々の努力が足りないだけ。
 海の国、日本。もっともっと海や海辺に目を向け、素晴らしい日本の海をもっと褒め称えよう。海に生きる人々がもっと胸をはろう。そして「この素晴らしい海の世界にようこそ」と多くの人を歓迎しよう。

 先日、子供時代に御世話になった砂浜に行った。近所に住むというおじいさんが散歩していた。波打ち際でなんとも良い表情をした流木を拾っていた。
「この海はかわらないですね。きれいですね。」
「ああ、そうだな。昔に比べたら遊びに来る人が少なくなったけどな。まあ、何もないからな。」
「何もないって・・・でも、そんな流木がいっぱい落ちてるし、貝もとれるし、良い所ですよ。」
「まあな。わしは流木拾いが生きがいでな。毎日見に来るのが楽しみでしょうがないよ。」
何もないかもしれない海辺・・・でもおじいさんには宝物のつまったかけがえのない自分だけの庭。私はうれしくてしようがなかった。私はおじいさんと少しばかり、同じように波打ち際を歩き、同じように流木を拾った。
 その数日後、私は所用で東京の人ごみの中にいた。立ち寄った雑貨店。とあるコーナーで流木が売られていた。
流木が売れるのか・・・ちょっとびっくり。おじいさんの拾っていた流木よりセンスは乏しい。値段を見て手が震えた。2万8千円。
 おじいさん、私たちはシアワセなのかもしれないね。とっても。

ときめきいっぱいがあふれてる海が、ほら、そこにあるよ。
あなたには見えるかな?

添付画像
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