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<海と生きる海と遊ぶ NO3> キューリ 06/5/26(金) 11:07 [画像あり]

<海と生きる海と遊ぶ NO3>
 キューリ E-MAIL  - 06/5/26(金) 11:07 -

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[画像あり]〜添付ファイル〜
・名前 : PicG0001.jpg
・サイズ : 33.3KB
   私は10メートルあまりのヨットを住処としている。
海の上を移動する家。
舫を解きさえすれば世界の海に乗り出していける家。(実際には国際航海には様々な手続きが必要なので、思い立ったが吉日とはいかないが・・)
そう思うだけで海人間としてなんだか不思議な満足感を得る。

 朝5時、近くの漁船が漁に出かけ、その引き波で起こされる。露に濡れたデッキをひと回りし異常がないかチェック。ヨットが揺れても大丈夫なコンロで湯を沸かしコーヒーを入れる。PHS電波で送受信できるパソコンで、メールとニュースと天気のチェック。さすがにヨットに新聞配達は頼んでいない。
 私の相棒はこのヨットから出勤する。お弁当を持って。海をまたいで。
仕事仲間からの皆からは「海の上に住んで大変だろう」と同情を買っているようだが、一度遊びに来ると「いいな!うらやましい」と反応が変わる。皆立派な家を持っているが、ヨットの船室の隠れ家的な雰囲気が妙に楽しいらしい。
船室の広さは普通の家にすると8畳くらい。その中にトイレも台所もリビングもコンパクトに収まっている。デッキにはテーブルがあり、数人は腰かけられる広さがあるから、晴れた日にはここがオープンテラスのような役割を果たす。
庭は木なんて生えてないが、広い。なんたって世界の海が庭である。

 しかし、海の上に住んで困った事は相当ある。
まず、住民票。私は以前市役所職員で住民票の係をしていた。市民の皆さんに「住民票はしっかりしてください」とお願いしていた立場にあったが、日本ではいかんせん海の上に住民登録をする事は出来ない。しかし、日本の一市民として住民登録はせねばなるまい。私は実家に住民登録をしている。
行政に関しての様々な事項はこれで一応解決。
 現実的に困っているのはゴミの問題。海の近くにゴミステーションがなく、面倒だが普段は実家に持ち帰り処理している。しかし、あちこちに寄りながらの航海をしている時はこれは出来ない。地元の方にその地のゴミ事情を聞き、たまには市町村発行のゴミ袋を一枚しか使わないのに大量に購入し、頭を下げ、ゴミを出させて頂く。
日本の港には(立派なマリーナ以外)ゴミステーションもゴミ箱もない。有料でもいいから・・・と思うのだが、ない。おかげで多くの港は地元の方や釣り客などが残したゴミが散乱している。
「ゴミは持ち帰りましょう」と看板を立てるだけで水際からゴミをなくそうとするのは無理な話ではないか、といつも思う。水際のゴミが一掃されたら日本の海に多く見られるビニールのゴミ袋なども随分と減ってくるだろうに。
現在、観光客が多く訪れる山などでのゴミ処理が問題になり、様々な解決策が打ち出されているが、海の方は何も変わらない。
ちょっと気晴らしに、ちょっと散歩に、と海の近くに遊びに来る人は観光地に訪れる人の数の比ではない。多くの人達はそれほど海を愛している。それを考えれば海のそばにはもっとゴミ箱やトイレを設置すべきだろう。
今の日本の海際は「海で遊ばないでください」と暗に人を締め出している印象さえ与えてしまう。

 かつて海の上で暮らしていた日本人は多かった。
家族で漁船に乗り生活をしながら魚を追っていた人達も随分いたが、行政指導により姿を消した。北九州市では条例として海の上で寝泊りする事さえ禁止しているという。住民登録しない、あるいは住民登録出来ない住民が増えても困るのだろう。
しかし、欧米などでは海の上で暮らす人が確実に年々増えている。昔ながらの海洋民族の血もさることながら、国としても理解を示し対策を講じている。
また、パソコンや携帯電話などの情報通信ネットワークの充実も海上生活を手助けしている。
海の上で暮らす子供たちの為の通信教育プログラムも存在する。
以前オーストラリアから航海してきたヨット一家。
小学生の子供2人は朝から一生懸命船室で宿題をしていた。
「昼までにすませなきゃ先生に怒られる」と必死。宿題はパソコンでオーストラリアの先生に送り、先生はまたパソコンで子供たちに答えていた。
 また、ドイツのセイラーは毎日株価のチェックに余念がなかった。
日本の片田舎の漁港に泊めたヨットの船内でパソコンとにらめっこしながら売り買いの指示を出す。「儲けたら帆を買うんだ」とにやっと笑った。

 日本で海の上に暮らす人がもっと増えたらな、と願いはするが、そのためには行政手続きや人々の意識が変わらなければ問題は多い。「海のホームレスだな」とがっかりするような事を言う人もいる。いえいえ、このヨットが立派な家なんですよ。わかりません?
いつのまにか日本人は土地に定着した生活が当たり前になったようだ。歴史を辿ればいかに多くの日本人が海の上で生き、海を自分の庭としてきたか解る。
日本文化、言葉、文字、風習、物資、今私たちの周りに存在する何気ないも
のが、海の道を通り海で生きる人間により伝えられたものである。
だが、海の上で多くの日本人が暮らしていたのは遠い昔ではない。昭和40年頃までは船で暮らす家族は多くいた。高度成長期ですべてが変わってしまったようだ。


私は日本の海を誇りにしているからこそ海で暮らしたいと思うし、日本の海を感じていたい。
 しかし・・・この家・・・よく揺れるなあ。

添付画像
【PicG0001.jpg : 33.3KB】

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